SKY~なんちゅのPFCSブログ~

なんちゅのPFCS用のブログです。かなりフリーダムです。

敗者と勝者 2

――ルーカス達は北の街へと辿り着いた。
ハサマ王が竜巻を発生させ、その中に入り込み移動することにより、移動時間を大幅に短縮させた。


「ここが北の街だけど…活気がないね」

 ルーカスがぼそりと呟く。いつもアンティノメルの街は活気づいている。
 なのに何故か今日は、活気が全く無い。


「資料で読ませて貰っています、アンティノメルの北側の街は交渉や伝統品の売買などで賑わっていると聞いてます。」

 ルビネルのフォローにより、ルーカスが説明する手間が省かれる。

「ならさ、なんでこんなに不気味なんだ?」
クライドが不気味がる。

 不気味がるのも仕方が無い。賑わっている街がしん…と静かになっていたら
 誰でも不気味に思うものだ。
 だが、この不気味さは違う。


「叫び声、うめき声が聞こえるよ…」
 ミネルヴァの言葉はこの不気味さを表すには的確だった。
 事実、よく耳を澄ますと叫び声やうめき声がうー、うーと聞こえてくるのだ。

 そのままジョセフの居るという資料が書いてある場所に辿り着くまで、倒れている人が何人か居た。
全員が、うめき声をあげている。

 ルーカスはそのあまりにも痛々しい後継に、心を痛めた。

 

「ねぇ」
 ハサマが目の前の建物に指をさす。
「あれじゃないかな?」
 その建物はジョセフのいる建物の情報と一致していた、
 いや、一致しなくてはいけなかった。

 豪華な屋敷、貴族でもいるのだろう、だが…

「前の持ち主は親を殺した、その名はアリギエーリ…か。嫌だね」
 その屋敷は不穏な噂があり、誰も近づかない屋敷である。
 前の持ち主がアリギエーリの屋敷、そこにジョセフは今逃げ込んでいるという。


「とりあえず、どうしようかね?正面突破でもするかい?」
 ルーカスは皆に問いかける。いいアイデアはないのだろうか。
「俺は裏口から入るのがいいと思うぞ」
 オムビスが裏口を提案するが、裏口は何処に有るのだろうか。

「裏口なら屋敷の何処かにある筈です!早めに探しましょう。
私の香水でボールペンをスケート靴代わりにすれば、皆さん負担なく探せます」
 ルビネルは自身のボールペンに香水を吹きかけ、自分の靴の裏に置く。

 するとどうだろうか。

 ルビネルのボールペンが勝手に動き出し、靴がスケート靴の代わりになったではないか。
すいすいと動くルビネルの靴。

「効果は七分ほどです!皆さん、急いで裏口を探しましょう」

 皆はルビネルからボールペンをスケート靴の代わりにしてもらい、裏口を探し始めた。
 全員がやられると困るので、バラバラになり行動を開始した。

 


「ですがどこが裏口なのか…」
 ルビネルは裏口を探すために窓ガラスに近づく。
 ガラスの奥底に、人影がいた。
 そこに居るは肌黒…比喩ではなく、本当に黒い…の男。
 ルビネルの方向を見ると男はニヤリと怪しい笑みを浮かべ、ルビネルは危機を察知した。

 やばい。見つかったかもしれない。

 次の瞬間、ルビネルの体の奥…心臓、頭、心…から、恐怖の衝動が溢れ出した。
男は、不敵の笑みを浮かべていた。

 

 ルビネルが香水を吹きかけてから七分後、ルーカス達は裏庭から入れる事に気づきルビネルを呼び戻そうと別の道を徒歩で歩く。

「ルビネル、遅いねぇ」
 クライドが心配する。ルビネルを探すのはクライドに任せる事にした。

「ぼくたちはここで作戦会議をしておくよ」
 ルーカス達はここで作戦会議を行うことにした。クライドがルビネルを探してくれると信じて。


「ルビネル、いるか?」

 探しているうちに木の方向から何かの音に気づく。
 誰かが泣いている?
 ボールペンが落ちている。もしや。

「うっ…ぐすっ…」
「ルビネル!」

ルビネルは木の後ろに隠れて一人すすり泣いていた。
クライドは急いでルビネルに駆け寄る。
「大丈夫か!?傷つけられたか!?」
「違うの…私、何も向いてない気がして」
「何言ってるんだよ!ルビネルのおかげで俺たち裏口を見つけたんだぜ!」

クライドが泣いているルビネルをなだめるものの、ルビネルは一向に泣き止まない。
何かおかしい。
「そういえば…敵は、敗北の感情だっけ?を知らないんだよな…んで、サムサールを
まさかルビネル、そいつの目を…!」
その言葉を聞き、ルビネルはハッとする。

「そういえば…サムサールだった気がします…
肌が黒くて…目が三つあって…
あ…でも、私、だめ…」
ルビネルの言葉によりルビネルをこの状態にさせたのがジョセフだと確信する。

「とりあえず、ルビネルは屋敷から出て待ってて。」
「いえ…私も戦います、から…」
「そんな様子じゃ戦えないだろ…どうしてもって言うなら、少しだけ外で待ってて。」
「…はい」

 

ルビネルはその後クライドにかつがれ、ルーカス達の元へ往くが、クライドの説明により少し裏庭で待っておくことにした。

「敗北の目、ね…」

ルーカスはその目にとらわれた時の事を考えていた。

――ルーカスは全ての鬼で最も心の弱い鬼、と言っても過言ではないほど心が弱い。
アンティノメルとヒーロー団体を設立した時は、緊張のあまり吐いてしまい倒れてしまった程だ。

それでもルーカスは自らの弱さをなんとかひた隠しにし、精神安定剤と週一のカウンセリングで乗り切ってきた。

毎日、ずっと敗北は感じている。

種族、性別で差別をしない鬼として有名でもあるが、それは同時にルーカスの心が弱すぎて『みんな仲良く』という有り得ない思考を持っているからだ。


――ルーカスは敗北の目を見る事に怯えていた。
ルビネルが一瞬彼の目を見ただけでこれだ。ぼくは、どうなってしまうのだろうか?
…考えるだけでも、恐ろしかった。

それでも、進む事にした。
アンティノメルを救う為に。


「裏庭から突破する!戦闘は主にオムビス、クライド、ミネルヴァ。サポートはハサマ王、ぼく。落ち着いたらルビネルが両方に立ってくれ」

そして裏庭から扉を開いた。


不気味な事に、見張りは一人も居なかった。