SKY~ナツユのPFCSブログ~

なんちゅのPFCS用のブログです。かなりフリーダムです。

一方その頃〜本編〜

文章を(梶井さんや森さん江戸川さんの読みすぎで)文学チックにするという実験付き

 

ダン、と壁を叩く音が聞こえ、心地よい音が反響する。
「違う違う違う!!!」
「っと……!?」
二つの一人しか座れないソファが置いてあるだけのちんけな部屋に、クレイン=スミスとン・ロヴォロス・ダンテが座っている。壁側がダンテだ。
いきなり壁を叩き出したのだ、クレインはたいそうおどろいて心臓が一瞬ひやりとした。
息を荒くし、ダンテは小さくなった瞳を泳がせていた。先程壁を強く叩いたせいで、手が痛む。リンゴのように赤く腫れている。 
「……や、やだ……アタシなにやってるのかしら……」
本当は薄くスライスした氷の像、繊細でキラキラ輝く飴細工のようにちょっとでも触ったらくずれそうなほど本能が勝ち理性が保たれていない。
クレインはびっくりとしながらも、ダンテに向かって今月の密輸、事件が順調であることを伝えた。
「(壊さなきゃ、ソラちゃんを壊さなきゃ)」
目の前にいる顧客を無視し、ただ頭には十七となる少年の顔だけがチラチラ、チラチラと映る。
渦巻くこの衝動は、強制的に抱かされるサムサールの呪いによく似ているが違うもの、本能である。
ガラスの破片の如く散っていく理性は、ダンテの中の決めつけられた運命を助けるかのごとく決められた運命、本能にとって美しかった。
だがしかしどこかがそれを止めようと必死になる、 友の顔、愛してしまった己を殺す者の顔が何度も浮かび、頭をその伸びた精霊とは思えない──まるで龍のような手で抱え、暴走を止めるのだ。己にしか見えぬ本を開いた手でぺらりとめくり、なんとか己の暴れたい気持ちは収まった。
「(アタシ……まだ記憶をなくすわけにはいかないの……お願い、止まってよ)」
水滴が数粒本に落ちては一瞬で乾き、クレインはそれを必死に心配して手を差し出す。
誰も、誰も理解しなくて良い。その手を払いのけ、なんとか冷静になったダンテはクレインの話を聞き取り、今後ギャングの良い動きができるように最善を尽くした。